小説「情念の炎」筆者 鯉渕 義文からのご挨拶

                    鯉渕義文 佐藤純爾監督と筆者 有村次左衛門、広木松之介末裔と著者
                鯉 渕 義 文        佐藤純爾監督と筆者        有村次左衛門、広木松之介末裔と著者

 

本年は、安政7年3月3日に起こった「大雪の桜田門外の変」から丁度150年の佳節を迎える。

そのことを彷彿させるかのように今年の3月3日には小雪が舞い散り、そして旧暦の3月3日にあたる本年4月17日、不思議にも小生は、福島県須賀川で季節外れの大雪の場所にいた。

 

小生が「桜田門外の変」を描いた小説「情念の炎」を執筆しようと思い立ったのは、つい2年前のことである。

平成20年の暮れ、茨城県那珂市にある実家付近の一帯が市の区画整理の対象となり、祖父母の時代に建てた古い家を取り壊す事となった。そのため、家にあった荷物の整理をしていた折、今まで眼にした事のない貴重な写真が発見された。よくよく調べてみると大分古く、大正時代初期から昭和のはじめにかけてのものだった。

祖父や伯父の写真は直ぐに分ったが、それ以外に誰の写真か判明しないものが数点あった。親戚筋を訪ねてこれを見せると、一枚は祖母が結婚し、長男が生まれたのを記念して祖母の実家で撮影した集合写真であることが判った。また、他の一枚は小生の曽祖父と水戸に住んでいた孫の写真だった。

 

このことがきっかけとなり、翌21年正月、城里町役場に出向き、戸籍謄本をとった。目を食い入るように見ると、曽祖父の父親が、あの桜田烈士「鯉淵要人」の六男であることが確認できた。もの心ついた時、我が家に飾ってあった誰だか不明の肖像画が小生の曽祖父であったのである。

この後、初めて鯉渕本家を訪ね、五代目当主から明治43年に撮影された『鯉淵要人50年祭』の集合写真を見せていただき、その中に曽祖父が写っていることが確認できた。そして、本家の系図を参考に、戸籍謄本を基にして我が家の系図も作成した。

この時期は、折しも「桜田門外ノ変」映画化支援の会の歴史講座が水戸を中心に開催され、小生も参加してこの事件の背景や詳細な内容を学んでいた。また、佐藤監督がご来県されての講演会にも参加、監督の映画製作にかける情熱につよく胸を打たれた。

更に、この年の10月には、支援の会主催の「桜田ツアー」が企画され、小生も参加することとなった。その折、前の座席に座っていた城里町の郷土史研究家のNさんと出会い、鯉淵要人に関する貴重なファイルを頂戴した。その後もNさんから資料の提供を受け、それに報いる道として小説執筆を思い立ったのである。同時に、それは映画支援の会へのお礼の意味もあった。

Nさんをはじめ、先輩の歴史専門家の方々の御指導を受けながら執筆をつづけ、本年の10月、映画の全国上映に合せ、小説「情念の炎」上巻を完成する運びとなりました。

 

本来であれば、上・下が完成してから発刊となるべき所ではありますが、映画との関連で上巻だけの出版となり、皆様方にご迷惑をお掛けする結果となってしまいましたことをお詫びしなければなりません。

現在、執筆を再開し、下巻の完成を目指しています。

 

この桜田事変は今までタブー視され、一方では暗いイメージとして捉えられてきた経緯があります。しかし、よくよく調べてみると、襲撃を計画した水戸藩士も、襲撃に加わった下級武士たちも決してテロリストとして訓練されてきた人たちではなく、寧ろ、当時の緊迫した外交問題や内政問題を真剣に考え、真面目な生き方を貫いてきた民政家であり、高い見識と教養と身に付けていた人物であったような気がしてなりません。

 

「何故、かれらが桜田門外に立ったのか」。

その時代背景と心情に迫ることは現在の混迷する時代変革にも大きな示唆を投げかけているような気がしてなりません。単に、正邪、善悪という単純な視点で事件を見るのではなく、大きな歴史転換の時代にあって、かれらが目指したものが何であるのかということを真摯な態度で見ていくことで歴史的意義を見出す事が出来ると思います。

 

私たちにとって最も重要なことは、過去の歴史を大きな教訓として捉え、それをどう生かしていくか、ということではないでしょうか。

読者の皆様と一緒にこの事件の本質を考えていくことは、これからの時代変革に大変有益なことであると考えています。

如何にすれば理想的社会が創れるのか、如何にすれば平和な社会、平和な世界が築けるのか。その実現のために、私たちが出来る事を共々に考えていくことが出来れば、これ以上に嬉しいことはありません。

そして、世界から賞賛される日本人、世界の人たちから信頼される日本人、そして、世界の国々から感謝される日本人を目指していきたいものです。

 

平成22年12月吉日

 

                小説『情念の炎』著者  鯉渕 義文

 

 

 

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